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ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲

平田 薫(ヴァイオリン)

 1872年の秋にウィーン楽友協会の芸術監督に就任したブラームスは、その職務により多忙な日々を送る一方で、夏にはウィーンを離れて創作に没頭した。1873年にはミュンヘンの近くにあるシュタルンベルク湖のほとりのトゥッツィングを訪れ避暑生活を送っているが、「ハイドンの主題による変奏曲」は、この美しい景色に囲まれた町で作曲された。
 この変奏曲の主題は、当時ハイドンが作曲したとされていた、管楽器のためのディヴェルティメント「野外のパルティータ」(Hob.II:41-46)の第6曲第2楽章から取られた。ブラームスは、ハイドンの研究家である友人を通してこの曲を知るが、後の研究から、この「野外のパルティータ」は現在ではハイドンの真作ではないと考えられている。


主題 アンダンテ 変ロ長調 2/4拍子
 最初にオーボエとファゴットにより主題が提示される(譜例)。低弦楽器がピッツィカートを奏でる中、オーボエが中心となり音楽が進行する。


譜例(準備中)


第1変奏 ポコ・ピウ・アニマート 変ロ長調 2/4拍子
 弦楽器がゆったりと流れるように歌う。8分音符と3連符、上行する旋律と下行する旋律が組み合わさり、奥行きのある響きを作り出す。


第2変奏 ピウ・ヴィヴァーチェ 変ロ短調 2/4拍子
 主題冒頭の付点リズムを利用した変奏。強弱の変化に富んだ躍動的な旋律が印象的である。


第3変奏 コン・モート 変ロ長調 2/4拍子
オーボエとファゴットが8分音符を主体とした牧歌的な旋律を歌う。この旋律は、弦楽器へと引き継がれていく。


第4変奏 アンダンテ・コン・モート 変ロ短調 3/8拍子
 オーボエとホルンがゆったりと奏でる旋律がヴィオラの細かい動きと組み合わさって、憂いを帯びた雰囲気を作り出す。弦楽器と管楽器が入れ替わりながら音楽が進んでいく。


第5変奏 ヴィヴァーチェ 変ロ長調 6/8拍子
一変して活動的な変奏となる。3拍ずつのまとまった旋律がスタッカートで演奏されるが、休符やスフォルツァンドにより拍子感が乱れる。


第6変奏 ヴィヴァーチェ 変ロ長調 2/4拍子
 活動的な変奏が続く。弦楽器のピッツィカートにのせて、ホルンとファゴットが美しい和音を軽快に奏でる。後半は弦楽器も加わり、変奏曲はクライマックスを迎える。


第7変奏 グラツィオーソ 変ロ長調 6/8拍子
 始めにフルートとヴィオラが優しく穏やかに奏でる。シチリアーノ(舞曲の一種)による変奏である。


第8変奏 プレスト・ノン・トロッポ 変ロ短調 3/4拍子
 暗く密やかな変奏。弦楽器と管楽器が交替しながら8分音符で不気味に動き回る。


終曲 アンダンテ 変ロ長調 2/2拍子
 最初にバスにより提示されたフレーズが、16回繰り返され、変奏されていく。終曲自体が小さな変奏曲となっている。最後に再び現れた主題は、壮大なコーダへと続き、この変奏曲は華やかに締めくくられる。


初演:1873年11月2日 ウィーン楽友協会ホール
ブラームス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

楽器編成:ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、ティンパニ、トライアングル、弦五部

参考文献:
菅野浩和、門馬直美『作曲家別名曲解説ライブラリー7 ブラームス』 音楽之友社 1993年
西原稔『作曲家◎人と作品シリーズ ブラームス』 音楽之友社 2006年
今村央子『ブラームス ハイドンの主題による変奏曲・大学祝典序曲・悲劇的序曲』ミニチュアスコア解説 音楽之友社 2016年

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