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第237回演奏会のご案内

音楽の都 ウィーン
 今回は第231回演奏会に引き続き、ウィーン在住の寺岡清高氏を指揮に迎え、ウィーンにちなんだ3曲を演奏します。
 前半は、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウス2世の人気オペレッタ「こうもり」の序曲と、ベートーヴェンの交響曲第8番です。交響曲第8番は第7番と同時に初演された曲で、人気の第7番の陰に隠れた印象ですが、古典的ながらも創意工夫に溢れ、躍動感のある名曲です。


世紀末ウィーンの作曲家 ツェムリンスキー
 寺岡氏は19世紀末から20世紀初頭のウィーンの作品をライフワークとしており、後半はその中からツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」を取上げます。
 ツェムリンスキーという名前に馴染みがない方も多いと思いますが、芸術の花開いた世紀末ウィーンの音楽シーンで重要な役割をした作曲家です。
 ウィーンで生まれたツェムリンスキーは13歳でウィーン楽友協会音楽院(現在のウィーン国立音楽大学)に入学し、優秀な成績でピアノ科を卒業した後も作曲を学び、ブラームスに見出されます。その後はワーグナーやマーラーの影響を受け、ロマンティックな作品を残しています。指揮者としても有能で、ウィーン・フォルクスオーパーの初代監督を務めました。
 現代音楽の祖として有名なシェーンベルクの作曲の師であり、義理の兄でもあります。また、アルマ・シントラー(後のマーラー夫人)も彼の弟子にあたります。


人魚姫の物語
 「人魚姫」は皆さんご存知のアンデルセンの童話。海の底に暮らす人魚姫は、難波した船から瀕死の王子を救い出し、恋をする。魔女に薬をもらい、声と引換えに人間の脚を手に入れるが、もし王子が他の娘と結婚すれば海の泡と消えてしまう。めでたく王子と御殿で暮らせるようになったものの、声を失った人魚姫は王子を救ったことを話すことができず、王子は浜辺で介抱した娘を命の恩人と勘違いし、結婚することに。人魚姫の姉が魔女にもらった短剣で王子を刺せば人魚に戻れると告げられるが、人魚姫は海に身を投げ泡となり天国に昇るという、悲しく切ないお話です。
 アルマに恋をしたツェムリンスキーでしたが、結局アルマはマーラーと結婚し、失恋してしまいます。ちょうどその時期に作曲されたのが「人魚姫」でした。人魚姫の物語の光景や心情が音楽でドラマティックに表現されています。
 シェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」と同時に初演されたのですが、「ペレアス」の評判が良くてツェムリンスキーは落胆したのか、その後演奏されることはありませんでした。ツェムリンスキーが1938年に米国へ亡命したこともあって楽譜は散逸していましたが、1980年代にようやく蘇演され、再評価されています。「ペレアス」よりもわかりやすく、映画音楽のように楽しめる作品となっています。
 どうぞお楽しみに!(H.O.)

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