2005年7月演奏会パンフレット掲載予定


「ダフニスとクロエ」(全曲)を楽しもう!


■構成

<第一部> 
序奏
  聖なる森のはずれにある野原。春の午後、若者たちはニンフ(精霊)の祭壇へ祈りを捧げる。
宗教的な踊り
   ♪ヴァイオリンによる優美な旋律
  ダフニスとクロエがそれぞれ登場。
  ダフニスを囲んで踊る娘たち。クロエの嫉妬。

   ♪軽快な7拍子
  ドルコンがクロエに接近。ダフニスは割込む。
全員の踊り
  ダフニスとドルコンは踊りで勝負をすることに。
ドルコンのグロテスクな踊り
   ♪ティンパニによる2拍子のリズム、ファゴット
  ドルコンは皆に嘲笑される。
ダフニスの軽やかで優雅な踊り
   ♪フルート群の旋律、ホルン
  ドルコンに勝ち一同の前でクロエを抱擁する。ダフニスはその余韻に恍惚となる。
  リュセイオンの登場。

   ♪クラリネットによる印象的なフレーズ
  リュセイオンの踊り。ダフニスを誘惑する。
   ♪ハープの伴奏にフルートの旋律
  海賊が襲来。クロエが囚われてしまう。残された靴を見つけダフニスは絶望して気を失う。
   ♪クレッシェンドを経てffへ到達
夜想曲(第一組曲はじまり)
   ♪PPの弦楽器
  3人のニンフ登場。神秘的な踊り。
   ♪フルート、ホルン、クラリネットのソロ、ウィンドマシン
  ニンフによって蘇生したダフニスはパンの神にクロエの無事を懇願する。
間奏曲
   ♪合唱、舞台裏のホルン、トランペット

<第二部>
戦いの踊り
   ♪低音群の力強い刻みに始まり、荒々しく盛り上がる (第一組曲終わり)
  グリヤクシはクロエに一曲踊るよう命ず。
クロエの哀願の踊り
   ♪コールアングレのソロ
  クロエは逃走を試みるが失敗。
  大地が裂けて突然パンの神が現われ海賊たちにのしかかる。海賊たちは逃げ出す。

   ♪ウィンドマシン

<第三部> (第二組曲はじまり)
夜明け
  ダフニスが祭壇の前で眠っている。鳥のさえずり。夜が白みはじめやがて日が昇る。
   ♪フルートの細かいアルペジオ、低弦から静かに始まる旋律が徐々に弦全体へ
  二人の再会。
無言劇
  二人はラモンからパンに助けられたことを知り、
  パンとシランクス(パンの恋人)に扮してパントマイムを踊る。

   ♪オーボエ
  ダフニスは葦で作った笛を吹き、愛を告白する。節に合わせて踊るクロエ。
   ♪フルートの長いソロ
  クロエはダフニスの腕の中に倒れ込む。
   ♪フルート群の掛け合い、アルト・フルート
  祭壇の前で愛を誓い合うダフニスとクロエ
全員の踊り
  バッカスの巫女の衣装を着た娘たちが登場。
   ♪5拍子、小太鼓、Esクラリネット
  若者たち登場。全員で恋人達を祝福し踊りは最高潮へ達する。

[登場人物]
ダフニス(美しい羊飼いの若者)  ラモン(年老いた羊飼い)
クロエ(美しい羊飼いの娘)    グリヤクシ(海賊の首領)
ドルコン(醜い牛飼い)      3人のニンフ(精霊)
リュセイオン(豊満な年増女)   その他大勢

まとめ 田川暁子(ヴァイオリン)


■ 原作 − ロンゴス 作「ダフニスとクロエー」

2世紀後半〜3世紀前半にギリシャ人ロンゴスによって書かれた素朴で牧歌的な恋愛物語。作者は序で次のように書き記しています。

(この書物が)すでに恋をしたことのある人にはその思い出をよみがえらせ、まだ恋を知らぬ人にはその手引きともなれかしと願う。この世に美しいものがあるかぎり、眼がものを見るかぎり、エロースの手を逃れた者はかつてなく、これからもありえぬからである。

(あらすじ)

エーゲ海に浮かぶレスボス島のミュティレーネーは豊かな自然に恵まれた美しい町。山羊飼いのラモーンは山羊に育てられている一人の幼子を見つけ、「ダフニス」と名づけて自分で育てることにしました。2年後、ある羊飼いもニンフ(妖精)の洞に捨てられていた女の子を拾い「クロエー」と名づけました。二人の捨て子にはそれぞれ身元を示す高価な装飾品が添えられていました。

やがてダフニスが15歳になったころ、ラモーンたちが夢の中で受けたお告げのとおり、ダフニスは山羊飼いにクロエーは羊飼いになり、一緒に仕事をするようになりました。

ある日、クロエーはニンフの洞で体を洗うダフニスを目にしました。その時彼女は水を浴びるダフニスのあまりの美しさに目を奪われ恋に落ちてしまいました。しかしこのような心の状態を彼女は何かの「病気」に違いないと考えました。まだ「恋」というものを知らなかったからです。

牛飼いのドルコーンはクロエーに好意を寄せていて何としてでも想いをとげようとしました。ある時ダフニスとどちらが魅力があるかということで口喧嘩になりました。クロエーは当然ダフニスを勝者として選び口づけしました。その後のダフニスはクロエーと同様恋の病にかかってしまいました。

秋になった頃海賊が町を襲ってきました。町中で略奪行為をしダフニスもさらわれてしまいました。ドルコーンも海賊に打ちのめされてしまい、クロエーに笛を託して息を引き取りました。彼女が笛を吹くと船が難破しダフニスも海を泳いで戻ってくることができました。

ダフニスとクロエーはある日フィレータースという老人に出会いました。彼は「エロースという何でも意のままにできる神様がいる。君たちはエロースの特別の加護を受けている。」と語りました。そして昔体験した自分の恋(エロース)の話をし、三つの「恋(エロース)に効く薬」について二人に教えたのでした。彼らは初めて恋(エロース)の存在を知り、まさに今その状態にあることに気づきました。

さて、小さなことがきっかけで近隣の町と戦争が起こり、クロエーが捕虜の一人として囚われてしまいました。ダフニスはニンフの祠へ行き助けてくれるよう嘆願しました。すると、夜、沖合の船上で休んでいた敵の前にパーン(神)が現れ、次々と不思議な現象が起こりクロエーは無事にダフニスの元へ戻ってくることができました。ダフニスたちはニンフやパーンへの感謝として食物や酒を捧げ、老人が語った「パーンとシュリンクス」の恋物語を二人で踊りました。

待ちわびていた春になると、ダフニスは心身とも成長し三つ目の「恋(エロース)に効く薬」を試したくて仕方がありません。しかし二人とも横たわったままどうしてよいかわからず、ダフニスは自分の無知を恥じて泣いてしまいました。

ところが、その一部始終を日ごろから美貌のダフニスに目をつけていたリュカイニオン(農夫の女房)が見ていたのです。あくる日、リュカイニオンはダフニスがしたいことを教えあげる、と言葉巧みに森へ誘いました。純真なダフニスは下心には全く気づかず、この女に手ほどきを受けてしまいました。

夏が近づくと、すっかり年頃になったクロエーにも縁談がたくさんくるようになりました。それを聞いてダフニスは落ち込みましたが、彼もまた彼女の両親に求婚の承諾を請いました。クロエーの父は承諾しましたが、ダフニスの父(ラモーン)は、結婚は秋まで延ばすこと、息子は実はよい家柄の出である、と付け加えました。

秋になるとラモーンが仕える主人がやってきました。とうとうラモーンは主人に、自分はダフニスの本当の親ではないことを告白しました。そして証拠の品を見せると主人夫婦が若い時に捨てた子ということが判り、皆は喜びで沸き返りました。

しかし皮肉なことにクロエーはダフニスとの身分の違いがわかったことで悲嘆にくれてしまいました。クロエーの父もついに彼女の身元について主人に打ち明けました。主人も二人の仲を認め盛大な披露宴を催しました。するとクロエーの実の父親もとある富豪だということがわかりました。

こうして人々の祝福の中ダフニスとクロエーは晴れて夫婦となり、その後も村で牧人風の暮らしを続けました。

参考文献 : ロンゴス『ダフニスとクロエー』訳 松平千秋(岩波文庫)
※ 人物名や地名は参考文献の表記にならっています

イラスト 安田 望(ヴァイオリン)
まとめ 田川暁子(ヴァイオリン)

注)ホームページでは都合によりイラストを省略しております。当日配布のプログラム冊子でお楽しみください。


■ ウィンドマシンについて

今尾 恵介(打楽器)

「ウィンドマシン」が本日の「ダフニス」やグローフェの「グランドキャニオン」、R.シュトラウスの「アルプス交響曲」などで使われている、などというのはオケ界の話であって、世間では映画撮影で風を吹かせる強力扇風機、または果樹園などの霜防止ファンを指すらしい。

風の音を描写するこの「楽器」も本来なら黒子に徹し、舞台に姿を見せない方が効果的と思われるのだが、「木製のワクで帆布を摩擦する」発音方法ゆえ、引っ込んでいては聞こえない。さて実は、ラヴェルはスコアにウィンドマシン(仏語machine _ vent)などという世俗的な言葉ではなく、「エオリフォンEoliphone」と指定している。ギリシアの風の神アイオロスにちなんだ命名である(風で鳴るエオリアン・ハープと同じ発想)。今回の楽器は埼玉県の桶川市民吹奏楽団から拝借したもので、メンバーによる手作りという。本日も「風神様」がご機嫌麗しくあらせられますように...。


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