「伊福部昭先生のすべて」

 伊福部昭は稀有な作曲家である。伊福部昭は単に純音楽的な傑作の数々を創作するに留まらず、その活動範囲は広い。映画音楽の世界、学識の面でも多くの偉業を成してきた。
 わたしたちは十八年前、先生の古希を祝うコンサートを行なった。その際のプログラムノートに弟子で今は亡き作曲家・黛敏郎氏は記述している。
 『先生の音楽はその人柄と同じく、強烈な個性に貫かれている。それは単に、日本的、民族的という表現だけでは当てはまらない、もっとスケールの大きな個性である。・・・・スラヴ的とでも云うべき哀愁を秘めたリリシズム、時として童心を喚起するような根源的――いやむしろ子宮的とでも云うべきか――ノスタルジア、それらが原初的、躍動的なリズムを伴って、執拗なオスティナートの上に展開する。』
 また同じノートに東宝映画の田中友幸氏はその祝辞で述べる。
 『壮大で悲愴、東洋的な、どこか宗教を感じさせる旋律は、時代劇や超大作によくマッチした。なかでも「ゴジラ」をはじめとするファンタジーフィルムは、ほとんど伊福部さんの独壇場であった。』
 弟子の作曲家・池野成氏が『・・・・その並はずれた広汎な学識は云うに及ばず、四書五経をその根底においた真の教養、卓抜な見識』と述べられているが、伊福部昭を「交響譚詩」、「ゴジラ」の作曲家としてしか知らない方々は、わたしたち日本の作曲家の多くが、先生の厖大なる「管弦楽法」(上下巻)からオーケストレーションを学んでいることをご存知ないだろう。これらはまさに先生の作曲家として、人間としての多面的な深さを表していよう。
「米寿記念演奏会」では、「タプカーラ」で、「ゴジラ」で、そして先生の薫陶をうけた弟子たちによる新作、編曲をとうして、伊福部昭のすべてが映しだされる。

伊福部昭先生の米寿を祝う会・実行委員長
石井眞木(作曲家、指揮者)

伊福部昭米寿演奏会(2002年5月19日)ちらしより


これからの演奏会に戻る

ホームに戻る