2006年6月維持会ニュースより


新響の魅力は?<新響の過去・現在・未来>

団長 土田恭四郎(チューバ)

 個人的なことで恐縮だが、新響に入団してから今年で25年目。創立50周年を迎える新響とはちょうど半分のお付き合いとなった。大学の卒業を翌年に控えて入団した当時、私自身がここまで長続きするとは思ってもいなかったし、現在の新響の姿なんて当時は予想にもしていなかった。
 入団当時の新響の印象は、とにかくオケの音がでかい!うるさい!熱い!指揮者の芥川也寸志がテレビで拝見する温和な顔と大違い!とにかく音楽を愛してやまないその情熱とアマチュアだからという妥協を許さない芥川先生が強烈だった。新響はとにかく周囲から注目を集めてはいたが、それは常に芥川先生のネームバリューと一体化しての活動であった。
 そのような強力な指針が先生の死によって失われても、音楽に妥協を許さない姿勢を保ちつつ、新響は現在まで順調な変遷と発展を遂げていると感じている。特に企画面もさることながら演奏面での向上は著しく、質的向上を目指して一層幅広い企画を持つ団体となっている。
 現在、新響はいろいろなメディアに注目され、そこで言われている新響の魅力は以下の通りである。音楽への志が高いこと。組織がしっかりしていること。柔軟性があり且つ高い技術だけではなく曲の練習を通して自分を豊かにするという認識を持っていること。仕事ではなく本当に音楽が好きで求めてやっているからエネルギーがあり、それが新響の底力を支えていること。いわゆる名曲にとらわれず邦人作品や現代曲も含めて収益に左右されない自由な発想でのプログラム・ビルディングを実行していること。
 私個人の考える新響の魅力は、自分の演奏技術と音楽的好奇心を仲間と共に新響の練習を通して高めていくことができること。錚々たる指揮者と指導者に恵まれて音楽的な刺激が得られること。練習の時から作曲家・共演者と交流を持ち、指揮者の作品に切り込む姿勢とともにその作品の持つ意図や思い入れについて作曲家を通して直接的に身を持って体験できること。演奏会に配布するプログラム冊子の内容が近年とみに充実し、作品・作曲家および共演者への理解を深めていること。
 しかしながら、これだけ活動の幅が広がり発展してくると現実的な問題もいろいろと出てくることも確かである。曲の持つ高い要求・ハードルに対する演奏技術の限界。活動の拡大に伴う運営実務の増加と高い要求に対する実務遂行の過度な負担。時間的制約による運営パワーの減衰。演奏会・練習の回数に対する個人生活への限界。音楽的環境が豊富になり、新響よりも楽な練習で充実した音楽体験が可能という選択肢が以前より増加している中での団員獲得の難しさ。そして団員数の減少。
 新響を取り巻く周囲の反応は必ずしも良いものばかりではなく、相応にネガティヴで批判的な部分が、たとえ誤解だとしても多くあることを認識し受け止めていくことが大切だ。昨今の社会環境として、情報のスピードアップに伴い時間的余裕のない多忙な世の中で、限界と制約のなか、如何に新響の魅力を最大限に発揮しアピールしていくのかが課題といえよう。
 とにかく私たちの演奏を1人でも多くの方に聴いていただきたい。そしてあらゆる機会を通し魅力ある団体としての存在を発信していきたい。ひとえに応援をお願いする次第である。


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