2006年3月維持会ニュースより


 50年前はどんな年? <新響の過去・現在・未来> 

土田 恭四郎(チューバ)

 今年は新響が正式に発足してから50年。3回シリーズにて思いつくまま書いてみることにした。まず今回は「過去」をテーマに考えてみたところ、そういえば新響が50年前ってどういう年だった?ということが気になり、ざっくりと書き出してみよう。
 「もはや戦後ではない」という言葉に象徴される時代。この年に発行された「経済白書」の有名な一節でもって戦後の経済復興が完了、本格的な経済成長を向かえての「神武景気」真っ只中という年だった。なお、その翌年「なべ底不況」という反動不況期に入るがすぐに立ち直り、更に「神武景気」を上回る「岩戸景気」がやってきて、高度成長期の幕あけとなっていく。消費革命の時代に突入し、多くの新技術と新産業が登場した。
 国際的には、フルシチョフのスターリン批判演説。中国で毛沢東の「百花斉放、百家争鳴」演説。スーダンがイギリスから独立。モロッコとチュニジアがフランスから独立。パキスタンで最初のイスラム教徒による共和国の成立。エジプトのナセル大統領がスエズ運河(フランスの会社)国有化を宣言、英仏がイスラエルと共に軍事介入したスエズ動乱勃発(第2次中東戦争)。ハンガリーで市民が蜂起しソ連が軍事介入したハンガリー動乱の勃発(ブタペストの惨劇)。ポーランドで労働者による反ソ暴動。日ソ共同宣言の批准書を交換し国交が正式に回復。国連総会で日本の加盟が可決。東西対立という言葉に意味があった時代。世界平和への努力と東西対立激化に向かう情勢を認識させる。
 国内では、新潟の弥彦神社で元日の福餅撒きに集まった群衆が石段で将棋倒しになって120人近く死亡という大惨事が発生。三重県の参宮線で列車転覆。砂川基地闘争で調達庁が警察隊の出動により測量を強行し爆発、あわせて1000人近い負傷者をだした。また大阪で「美空ひばりショー」に群衆が殺到し死傷者10人をだした。「能代大火」「大館大火」「魚津大火」と災害が発生、また延暦寺では放火による大講堂や鐘楼、仏像の焼失という事件もあった。
 日本一の規模で戦後の復興と経済再建のシンボルだった戦後土木技術の金字塔、佐久間ダムが天竜川に完成。因みに殉職者は96名だった。
 国内政治では、前年に自由民主党が結党、党大会で鳩山初代総裁が選出されたが、その後鳩山内閣が総辞職し石橋内閣が発足した。国会では小選挙区法案審議中に衆議院本会議で大混乱(国会暴力乱闘事件)。売春防止法が成立。施行は1958年で溝口健二監督最後の作品「赤線地帯」に当時の世相がよく描かれている。また首都圏整備法が施行。「首都圏」という言葉が広く使われるようになった。あと中央気象台が気象庁となり、東海道本線の全線電化が完成。
 当時の流行というか文化では、大宅壮一が「一億総白痴化」といい、映画で日活「太陽の季節」が登場、これ以降「太陽族映画」が作られて問題視され、映画倫理管理委員会(映倫)発足のきっかけとなった。また無軌道で不道徳な若者のこととして「太陽族」(シンタロー刈り、アロハシャツ、サングラス)が話題となった。文学では、芥川賞を取った現在東京都知事の「太陽の季節」がベストセラーとなり、新聞社にしか週刊誌は作ることができないという常識を破った出版社系初の週刊誌として「週間新潮」が発売。
 スポーツでは、イタリアのコルティナ・ダンペッツォ第7回冬季オリンピックにて猪谷千春(現IOC副会長)がスキー男子回転で銀メダル、日本人初の冬季オリンピックメダル獲得。(日本では現在までアルペン競技唯一のメダル)。メルボルン第16回オリンピックで小野喬が体操で日本人初の金メダル獲得。プロ野球では、日本シリーズで巨人と西鉄が対戦して西鉄が優勝。日本隊がマナスルに登頂し日本初のヒマラヤ登頂となった。
 エンターテイメントに転ずれば、梅田と新宿にコマスタジアム(コマ劇場)が開場。洋楽ではとにかくロックンロール!エルビス!フォー!ってな感じ。日本のヒット曲は三橋美智也とか、このあたり映画も含めてとにかくいっぱいあって個人的に収拾付かなくなってしまうので残念ながら割愛!(お許しください!) 
 テレビでは、NHKで人形劇「チロリン村とくるみの木」と「お笑い三人組」、現在のTBSで、あ、鳥だ!飛行機だ!いやスーパーマンだ!の「スーパーマン」、日本テレビ「名犬リンチンチン」、ラジオ東京で♪剣をとっては日本一に〜の「赤胴鈴之助」(吉永小百合が出演!)。少年漫画では月刊誌「少年」に「鉄人28号」連載開始。
 物故者としてはエーリッヒ・クライバー、宮城道雄、クリフォード・ブラウン、ブレヒト、高村光太郎、キュリー夫人など。
 クラシック音楽では、モーツァルト生誕200年。NHKによる第1回イタリア歌劇団初公演。場所は当時の東京宝塚劇場だった。ウィーンフィルがヒンデミットの指揮で初来日(50人程度だったそうな)。この年以降ぞくぞくと海外から著名な音楽家・団体が来日する。N響の前身である新交響楽団が結成されて30年目。東響の前身である東宝交響楽団が設立して10年目。大阪フィルの前身である関西交響楽団ができて9年目。日フィルはこの年に設立。新響と同い年ですな。今回の指揮者、高関さんが音楽監督をされている群響は高崎市民オーケストラとして第1回演奏会を開催してから10年目。
 193回の曲目に関連して言えば、Rシュトラウスは85歳で亡くなってから7年目、ショスタコービッチはちょうど50歳で交響曲第11番「1905年」作曲開始、猿谷さんは宇宙空間(すなわち生まれていなかった)、高関さんは1才になるかならないか、といった感じ。
 こうやって書き出してみると、50年前が身近に感じてくる。懐かしくなってきた。現在、邦画で「ALWAYS三丁目の夕日」が人気を呼んでいるが、まさにあの世界!今晩は当時流行った「トリスバー」を気取って、トリスウィスキーのハイボールを飲むとしますか。


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