2005年6月維持会ニュースより


音の魔術師ラヴェルを吹く悦びと...苦悩

大薮言子(クラリネット)

もし「一生、一人の作曲家の曲しか聴いてはいけない」といわれたら、おそらく「ラヴェル」と答えるでしょう。私とラヴェルとの出会いは、ご多分に漏れず小学校の音楽鑑賞で聴いた「ボレロ」でした。不可思議な2つの旋律のみで最後まで聴衆を引き込ませるオーケストレーションに、子供心にも「すっごい人だなあ」と思いましたが、しばらくはボレロのラヴェルだかラヴェルのボレロだか人名と曲名をごっちゃにしていました。

ブラスバンドにどっぷりつかっていた高校時代、2度目の衝撃の出会いは偶然ラジオで録音した「クープランの墓」(小澤征爾・ボストン響)でした。木管の旋律の美しさにただただ感動して、一日に何十回も聴いていました。大学受験を控えた1年間は、戒めと願掛けのためクラリネット断ちをしており、「クープランの墓」も一日に一回しか聴いてはいけない!と決めました。夜、勉強を終えてわくわくしながら聴くラヴェルの美しいこと。至福の時とはまさにこのことでした。(余談ですが、夕方放映される「水戸黄門」も疲れた頭の一服の清涼剤にしていました。)

今回の演奏会では「ダフニスとクロエ」全曲版のE♭クラリネットを吹くことになり、大変光栄に思っていますが、とてもとても難曲です。あの美しい響きを生み出すために用意された音符たちに圧倒されるばかりです。ノさらい始めて一月半、譜面にかじりついて練習しているので、肩や首のコリが激しくなり頭痛、吐き気まで催して、ついに先日カイロプラクティックへ行きました。カイロの先生に「前のめりで縮こまって一生懸命何かしていたって感じになってますね」と言い当てられてしまいました。演奏会が終わるまでに、カイロ代も嵩みそうです。

シャガールが「ダフニスとクロエ」の画集を出していることを知り、インターネット上で数点見ることが出来ました。シャガール独特の透明感、色彩感にあふれたものでした。特にブルーを基調とした絵がとても美しく、ぜひ画集全部を見てみたいものです。

音の魔術師の魔法の一部になれますよう精進の日々をおくっています。


これからの演奏会に戻る

ホームに戻る