第157回演奏会(1997年4月)維持会ニュースより


ブルックナーひとくちメモ
交響曲7番ホ長調 ハース版とノヴァーク版のちがい

♪ブルックナー交響曲7番のスコア

 現存する唯一の手掛かりは、初演後に出版するための版下であるブルックナー自筆のスコアであるが、これには後で付け加えたり、削除した跡がはっきりと残っており、この書き込み、削除がいつ、誰が行ったものか?が問題となる。そこで3つのスコアの状態が考えられる。
 1.ブルックナーが最初に書いたオリジナル(全く書き込みのない)状態;現在では正確に知ることはできない。
 2.初演後に(または練習中に)、出版のための書き加え、削除のあるもの;ここで問題になるのが、誰の意見で書き加えられたか。指揮者や弟子、周囲の人の助言があったことは手紙等であきらかだが、ブルックナーが本心から賛成したかどうかはわからない。
 3.現在唯一の手掛かりとなっている自筆譜;しかし出版後、この自筆スコアに書き加えがある可能性もある。
 オイレンブルグ版のスコアはこれを元にしていると言われている。

♪ハース版とノヴァーク版

・ハース版(1944年)
 最初のオリジナルこそが真のブルックナーのやりたかったものであり、後の書き込み、削除は無視するべきであるとしている。「疑わしきは採用せず」。
・ノヴァーク版(1954年)
 初演後の出版のため書き加え、削除は、たとえ弟子や指揮者の案であったとしても、本人が納得したのであれば、これを原典版とすべきであるとしている。
 しかし、ノヴァークですら自筆のスコアに書かれていることをすべてそのまま採用はしていない。出版後に書き込んだ(あるいは本人の意志でない)部分があると判断したようだ。

♪実際の相異点

 速度表示の若干のちがいと、シンバル・トライアングルの有無が主な相異点である。
 第二楽章177小節のシンバルとトライアングルは、初演したアルトゥール・ニキシュが提案したという話が残っており、もともと無かったが初演練習時あるいは初演後に付け加えられた。
 さらに自筆のスコアには “Gilt nicht”(無効)と書かれており、誰がこれを書いたかが今でも議論となっている。ハースはもともと無かったから無効。ノヴァークはブルックナーの字ではないとして打楽器を有効とした。最近、ブルックナーの筆跡とする動きもある。


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