第160回演奏会のご案内


新響を振った指揮者たち

 新響は、創設以来芥川也寸志氏に32年間、晩年の山田一雄氏に14年間、さまざまな音楽的薫陶を受け、育てられました。アマチュアである新響に真正面から取り組んだ偉大なこの2人の音楽家の亡き後も、新響を継続的に指揮してくださるすぱらしい音楽家たちに恵まれています。最近2年間の指揮者と主な演奏曲目を眺めてみましょう。

第151回 飯守泰次郎 ワルキューレ第l幕
第152回 小泉和裕 プロコフィエフ交響曲第5番
第153・154回 本名徹二 日本の交響作品展
第155回 原田幸一郎 べ一トーヴェン交響曲第6・5番
第156回 小林研一郎 スメタナ「わが祖国」全曲
第157回 飯守泰次郎 プルックナー交響曲第7番
第158回 井崎正浩 ショスタコーヴィチ交響曲第5番
第159回 飯守泰次郎 プラームス交響曲第4番

 新響はいつも、それぞれの指揮者にふさわしい曲を選ぴ、その曲についてかけがえのない音楽的体験を約束してくださる指揮者に指導をお願いするよう心がけています。ですから「指揮者」としては一般的ではない室内楽奏者・原田幸一郎氏のような方も、べ一トーヴェンやプラームスを演奏するのにベストな指揮者としてお願いしているのです。
 飯守泰次郎氏のバイロイト仕込みの「ワルキューレ」の演奏は印象深いものでしたし、97年のチェコ・フィルのオーストリア・ツアーおよぴ同フィルとのCD録音(97年10月ポニーキャニオンより発売)に先立って演奏した小林研一郎氏との「わが祖国」も多くのお客様に楽しんでいただいた演奏でした。

渡邉康雄・シベリウスヘの期特

 さて、今回の指揮者、渡邉康雄氏は新響初登場です。メインに取り上げるシベリウスは、新響が長い間、いつかは本格的に取り組みたいと考えていた作曲家でした。また92年9月に開催された渡邉康雄氏の日本フィル・デビュー演奏会で数名の新響ノンバーが氏のシベリウスを聴いて以来、シベリウスを演奏するならば氏の指揮で、との企画が温められてきました。
 渡邉氏は1949年生まれ。シベリウス・アカデミーで学んだフィンランド人の祖母、名指揮者の渡邉暁雄を父に持ち、ジュリアード音楽院でピアノと作曲を学ぴました。ピアニストとしての名声が高い渡邉氏ですが、現在の日本で心からの共感をもってシベリウスを指揮できる音楽家のひとりであると確信しています。

1940年・深井史郎・ブリテン

 コンサートの前半は、ともに1940年、いわゆる皇紀2600年の記念祝典のために作曲された曲です。深井史郎は、新響が注目し、ここ2〜3年の間、作品の演奏を続けている作曲家です。彼の作品のうち「パロディー的な四楽章」はCDにもなっている名曲ですが、これ以外はまったくといっていいほど知られていません。新響40周年の析に演奏された「交響的映像・ジャワの唄声」は、聴衆に強いインパクトを与えました。
 今回演奏される「創造」は当時盛んであった創作舞踊のために作曲された作品であり、また、作曲された時代を色濃く反映した作品ですが、同時代の作曲家には見られない深井独特の味をつけたオーケストレーションによる、氏33歳の作品です。
 ブリテンの作品は「奉祝曲」として委嘱されたものですが、「祝典に鎮魂曲とは何事か」と日本政府に拒否されたというエピソードだけがよく知られた曲です。優れた作品でありながら日本では稀にしか演奏されず、渡邉氏からぜひにと提案されたものです。
 演奏されることも、論じられることもきわめて少ない1940年代の音楽をさまざまな角度から問い直してみるのも興味深いことだと思います。渡邉康雄氏と新交響楽団との新しい出会いにご期待ください。

「日本の交響作品シリーズ」の開始について

 新響では、今回の深井作品を第l曲目として、戦前から1950年代の演奏されずに埋もれている交響作品群を「日本の交響作品シリーズ」として今後5年間で10曲程度ご紹介する予定です。どうぞご期待ください。

深井ルネッサンス一片山杜秀(評論家)
 深井史郎は伊福部昭、早坂文雄と並ぴ称されるべき管弦楽作家だ。が、その仕事は不当にも忘却されてきた。新響の深井ルネッサンスの企てに期待したい。

渡邉康雄さんのシベリウス一武井勇二
 (サイトウ・キネン・フェスティバル松本・総合コーディネータ)

 渡邉康雄さんは父親の故渡邉暁雄さんからは指揮のことを特に学ばなかったという。後から暁雄さんが使った亡き込みのあるスコアを見て、指揮の神髄、特にシペリウスの交響曲を血て感じとったようである。事実、91年、私は康雄さんのシベリウス交響曲第1番の指揮に接してその深い解釈と音楽性に驚嘆した。新響を相手に、さてどんな2番を聴かせてくれるか感迫る思いである。

新交響楽団プロフィル

1956年創立。音楽監督・故芥川也寸志の指導のもとに旧ソ連演奏旅行、ストラヴィンスキー・バレエ三部作一挙上演、10年におよんだ日本の交響作品展(1976年にサントリー音楽賞を受賞)などの意欲的な活動を行ってきた。最近ではマーラーの交響曲全曲シリーズ(故山田一雄指揮)、ショスタコーヴィチ交響曲第4番日本初演、日本の交響作品展91、92(石井眞木指揮)などの演奏会、また93年9月にはベルリン芸術週間に参加して3邦人作品をフィルハーモニーで演奏するなど、その活動領城を広げている。

第160回演奏会(1998年1月17日)ちらしより


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