第156回演奏会ご案内


<新響「わが祖国」全曲に挑戦!>

 創立40周年記念シリーズを好評のうちに終え、次の第1歩として新響はスメタナの連作交響詩「わが祖国」全曲をとりあげます。マーラー、ブルックナー、R.シュトラウス、ショスタコーヴィチなどの大曲がもはや半日常的に演奏される東京においても、「わが祖国」全6曲が作曲家の意思どおりにまとめて演奏される機会はまだ多くありません。「モルダウ」のみが名曲コンサートの定番となっているほかは、「プラハの春」音楽祭での定例イベントとしてのチェコ・フィルの愛国的演奏のイメージが強いように感じます。しかし、この素晴らしい大作をチェコの人々だけのものにしておくことには賛成できません。

 連作交響詩である「わが祖国」は、モルダウを含む6曲の独立した交響詩から成っていますが、モルダウ以外の5曲もそれぞれが西洋の管弦楽の素晴らしき結実というべき傑出した作品であるうえに、6曲が続けて演奏されたときに描き出される、長く深く壮大な物語から生まれる圧倒的な感動……。この作品は、ボヘミアの民族と国土への深い愛情を表現した音楽であることはもちろんですが、その真摯さと雄大さゆえに民族の壁を越えて、世界共通の人類愛、地球への愛といった段階にまで止揚され、世界中の人の心を打つ高みに至っているのが感じられます。これを聴衆の皆様に新響がお届けできることに対し、喜びとともに使命感さえ感じずにはいられません。
 この、スメタナの畢生の大作にしてチェコ民族の精神的財産であるだけでなく人類の偉大な遺産ともいえる作品を、東欧で長く活躍を続け、このたびチェコ・フィルの客演常任指揮者に迎えられた小林研一郎氏のもとで演奏できるのも大きな喜びです。小林氏の、緊張感みなぎる練習と、新響のエネルギーをこれでもかと引き出す情熱的な指導力。人類の至宝の大曲と新響の出合いに、どうぞご期待ください。

第156回演奏会(1997年1月25日)ちらしより


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