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権代敦彦:オーケストラのための ≪ジャペータ-葬送の音楽Ⅰ≫

権代敦彦(作曲家)


ジャペータは、荼毘(だび)の原語であり、
身を焼き尽くすほどの梵火の意。

ガンジス河畔の町ベナレス。
この聖地で、ヒンズー教徒は人生の最期を迎え、
河辺の火葬場で荼毘に付され、
遺灰をガンジスに流されるのを、最大の喜びという。
魂は炎とともに天に昇り、灰となった肉体は、
この河を下り、やがて海に注ぎ、宇宙の一部となる。

ガンジスの川岸に座し、
このジャペータの炎に、
生と死、地と天、昨日と今日、
そして今日と明日、あらゆるものの繋がりを見る。

“ジャペータ”~葬送の音楽~は、
この炎に託した、死者の送りとその魂の浄化を願う音楽。
打ち続けられる1音(C#)から拡散、そして1音(C#)への収縮、
そんな行きつ戻りつを繰り返し、
あたかも、河が海に、地が天に、今日が明日に繋がるように、
生も死に、そして死がまた生に・・・・・
そんな繋がりの象徴、始まりも終わりもない音楽“ジャペータ”。

燃え尽きた後に、何も残らないように、
この曲の終わりにも、何も残らない。
ただ長い残響が消え去る頃、
その響きは、人の心に宿り、その中で生きはじめる。
「葬送の音楽」は、その時「(再)生への序曲」になる。
そんな願いも込められている。


初演:2007年11月30日 仙台市青年文化センター 山下一史指揮 仙台フィルハーモニー管弦楽団
楽器編成:ピッコロ(1番フルート持ち替え)、フルート2、アルトフルート(3番フルート持ち替え)オーボエ3、クラリネット3、コントラバスクラリネット、ファゴット3、コントラファゴット(3番ファゴット持ち替え)、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、ティンパニ、シンバル、マリンバ、チューブラベル、グロッケンシュピール、ゴング、木鐘、弦5部


<権代敦彦 プロフィール>

1965年、東京に生まれる。
桐朋学園大学で作曲を学んだのち、1990年から92年までDAAD奨学生としてフライブルク音楽大学に留学。1993年から94年まで、文化庁芸術家在外研修員としてパリに滞在し、95年までフランス国立音響音楽研究所(IRCAM)で、コンピュータ音楽を研究する。作曲を末吉保雄、クラウス・フーバー、サルヴァトーレ・シャリーノに、コンピュータ音楽をフィリップ・マヌリに、オルガンをジグモント・サットマリーに師事。
ローマのブッキ国際作曲コンクール第1位(1991)、ワルシャワのセロツキ記念国際作曲家コンペティション第2位(1992)、芥川作曲賞(1996)をはじめ、アムステルダムのガウデアムス国際音楽週間(1992)やISCM世界音楽の日々(2001)での入選、芸術選奨文部科学大臣新人賞(2002)など、国内外で数多くの賞を受賞。
カトリックの信仰に基づく儀式としての音楽空間を探究。近年は仏僧、聲明家とのコラボレーションを通じて、仏教音楽との交流から新たな領域を開拓している。また、ノイズ・ミュージックのMERZBOWをはじめ、ヴィデオ・アーティストの兼古昭彦、ダンサー・振付家の金森穣など、他分野における第一人者とのコラボレーションも多い。
コンサート・プロデューサーとしても意欲的な活動を行っている。1995年から5年間、渋谷ジァンジァンで、シリーズ「東京20世紀末音楽集団→2001」、1997年から99年まで神奈川県立音楽堂で、「権代敦彦シリーズ・21世紀への音楽」を企画制作。1995年および99年には、東京カテドラルで自らの個展をプロデュース。2004年には、サントリー音楽財団のコンサートシリーズ「トランス・ミュージック〜対話する作曲家」の特集作曲家として企画も手がけた。
オーケストラや合唱作品を集めたCD『薔薇色の肖像』(Fontec)が1999年に、ピアノ作品をまとめたCD『きらめく光のとき−祈り』(ALM RECORDS)が2004年にリリースされている。
2000年にはニュージーランドのウエリントン・ヴィクトリア大学、オークランド大学で講義を行う。また2003年、アーティスト・イン・レジデンスとしてノルウェーのベルゲンに滞在。ベルゲン大学グリークアカデミーで講義を行う。
2004-2005年、オーケストラ・アンサンブル金沢のコンポーザー・イン・レジデンス。カトリック教会オルガニスト。
現在、パリと東京を拠点に作曲活動を展開している。
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