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団長あいさつ

 今、芥川先生がここにいらしたら新響のことをどのように想われるだろう、どのようなお話をされるだろうか、と、ふっと想いがかきたてられることがあります。芥川先生への思慕という単純なものではなく、新交響楽団がアマチュアの音楽団体として冷静に自己の存在と活動を見つめる時、また未来に向けていろいろな夢を思い描くとき、湧き上がってきます。
 芥川先生は新交響楽団創立以来、音楽を愛してやまないその情熱で、アマチュアだからという甘えに妥協せず、団員の自覚を促すべく音楽の指導のみならず運営に関しても深く関わり、常に団員を叱咤激励されておりました。まさしく「芥川也寸志と新交響楽団」は常に一体でした。指導者として数多くのメッセージを残され、新響にとって大きな財産となっております。そのような状況の中、指揮者で音楽監督という立場の芥川先生と新響とは一定の緊張感が存在していたといえます。先生と教え子、というよりは父と子という関係でお互いに共感を持ちつつも時には抵抗することもあり、新響は父親である芥川先生の深い愛情と薫陶により成長し続けてまいりました。
 芥川先生が1989年1月31日に63歳で亡くなられてから20年という歳月は、新響を取り巻く社会環境・音楽環境はもちろんのこと、芥川先生を直接知る団員も三分の一になって運営形態も団員の価値観も変化しております。必ずしも順風満帆でなく、多くの問題にぶつかり学ぶことによって新響は常に純粋な音楽団体としての自覚を持ち続けてきております。錚々たる指揮者・指導者の先生方に恵まれ、刺激に満ちたさまざまな音楽体験と経験を積み重ねて、独自の企画を展開することにより、質的向上を目指して大きく発展してきております。
 このように、世代交代をしながらも、常に前向きにアマチュアとしての誇りを持ってその可能性を追求していく信念と、多くの夢を追い求め、独創性を持って音楽に対する情熱をエネルギーとして失うことなく持ち続けていることは新響の大きな力です。「今」を活きている新交響楽団、その根底に流れている大きな力は、芥川先生の「音楽はみんなのもの」という強い信念に支えられたものであり、先生と団員の音楽への熱い想いが情熱となって、脈々と途絶えることなく流れています。芥川先生の存在は目に見えない形で新響に影響を与え続け、一つ一つの演奏会を通して音楽に全力で集中していく新響の演奏に、先生の熱い想いが重なって表現されているものと信じております。
 芥川先生は、作曲家として戦後の日本に影響を与え続けてきた作品を残されており、新響が演奏を積み重ねていくことは、指導者としての先生の側面とは別の新たな発見と新響の発展につながっていきます。父と子という関係に加え「芥川也寸志」という音楽に対する緊張感を持続することで、新響は先生と直接向き合っているのです。いつまでも団員名簿に先生のお名前が記載されていることも、具現化しているものの一つといえましょう。芥川先生は新響の中で現在も活きていらっしゃいます。

 本日はご来場誠にありがとうございます。

団長 土田恭四郎

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