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喜びをもとめて

大庭 美和子(チェロ)

 維持会の皆さま、いつもご支援どうもありがとうございます。

 月日は本当に信じられないスピードで駆け抜け、私、、今年で新響に入団して10年目となりました。心臓がクチから飛び出しそうなくらいに緊張したオーディションのこと、その100倍?!憂鬱だった合宿での新人宴会芸(第二次オーディション?)のことは未だ懐かしむことができませんが、憧れだったオケに入団してからの10年を振り返り、10年前の私とリンクするような?本を読みましたのでご紹介したいと思います。

◎『オケ老人!』(小学館文庫/荒木源著)

 新響内でも出回って?いるそうで、既に読まれている人も多いと思いますが、あらすじは・・・。

 30代の主人公がたまたま立ち寄った市民オケの演奏会に感動し、入団希望の連絡をしたところオーディションもなく入団OK!これはラッキーと10年以上もケースの中で眠っていたヴァイオリンを取り出し練習に駆けつけてみると、そこは、あの感動したオケとは別世界?の世界最高齢のアマオケ。その街には紛らわしい名前の「エリートオケ」と「老人(ばかりの)オケ」があり、どこでどう勘違いしたのか老人ばかりのガタガタの楽団に入団してしまったのです。もちろん、そこでは主人公が最年少で期待の星?であった訳なのですが、本当に入団したかったのは「エリートオケ」の方。その後「エリートオケ」のオーディションに辛うじて合格し、2つのオケを行き来することになり、アレやコレやいろんなことがあり、最後は、めでたしめでたし・・・と、かなり端折りましたが、楽しさテンコ盛りのお話です。

 「エリートオケ」に入団して必死に追いつこうと努力している主人公は、まさに私?!

 ちょっと違うのは、今まで雲の上だった人達が一緒にいることにドキドキし、練習中に飛び出したり、ヘンな音を出しませんようにとビクビクしながら「頑張ってついて行きますので宜しくお願いします」と小さな声(初々しかった?)での挨拶(お願い?)に「ついて来るんじゃなくて一緒に弾こうよ」と優しく嬉しい言葉をかけてもらえて、温かく受け入れてもらえた(と思っております!)こと。
 この言葉は今でも私の「やる気」の素!「音楽っていいな!!」と思える瞬間をたくさん運んできてくれて、それからの10年、新響は私の生活の一部となりました。それまでとは確実に心の意識が変わったと思います。

 ちなみに、、『オケ老人!』の書評を書いている藤谷治さんの『船に乗れ!』(ポプラ社)も私を睡眠不足にしてくれました。藤谷さんといえば、盗まれた「あのチェロ」がどうなったのか、ずーっと気になっていたのですが・・・『船上でチェロを弾く』(マガジンハウス)の中で、その顛末が詳細に述べられているらしいです。そうとは知らず乗り遅れてしまった私、、さっそく読んでみようと思います。

 今回ご指導下さる飯守先生は、技術だけで解決しない音程は友情や愛情であり、誰が合っている・間違っているではなく思いやりなのです。思いやりの精神で響きを作るのです。とおっしゃっています。

 シゴトが忙しくて自分の時間をつくれない日々もツライけれど、ひとりっきりで楽器と向き合う練習は、もっと(精神的に)キツく、「あぁ~~できないよ~つらいよ~」という日がくるのですが、泣きながらでも、もがいていると「あっ!わかってきた」という日がやってきて、この喜びを感じたくて弾いているようなもの?!

 これからも喜びを求めて、思いやりの精神を忘れずに、あきらめずに、いい音楽を目指していこう。

 雛祭りの日、私に(が?)ソックリな伯母が77歳になりました。何事にも一生懸命でアクティブなその伯母を見ていると、私も30年?は楽しいことがいっぱいありそうです。

【おまけ】
 演奏会を聴きにいらしたお客さまの書いて下さったアンケートの内容はすべて、団員向けに作成される『新響ニュース』に掲載され、団員全員の手に渡るのですが、新響での私、そのお客さまのナマの声をタイプするシゴトもしております。活動するのは年4回と裏方の地味~なシゴトですが、誰よりも早くアンケートを読める役得感や、私だけ?が見ることのできる紙面の風景のことなど、つぶやかせていただきます。

 演奏会で回収されるアンケートは毎回100~130枚ですが、邦人作品、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチなどインパクト大!(ストレスいっぱい?)の演目の時ほど反響(枚数)が多く、最高記録は155枚!213回の飯守泰次郎先生(指揮)・松山冴花さん(Vn独奏)をお迎えした時でした。

 タイプするにあたっての一番の苦労は、躍動感溢れる?個性豊かな文字たちの解読です。この作業さえクリアできれば99%は終わったようなもの?!初シゴトの時は37枚でしたが解読できたのは、たったの10枚。あとの残りは何が書いてあるのかサッパリわからず、練習場で皆に聞きまくりましたっけ。それから大先輩方のお知恵を盗むこと9年、今では文字を見ただけで誰が書いたものかわかるほどに(ホントです!)どんな文字でも翻訳?できるようになりました・・と思います。でも・・判読可能な文字!大歓迎デス。

 文字だけでなく絵も書いてある、黒ペンではなくカラーペンなど多色使いのアンケートも増えています。初めて住所・氏名・メールアドレスの印鑑が押されているものを見た時はビックリ仰天でした。(いつも持ち歩いているのでしょうか??確かに、間違いなく次回のご案内を郵送させていただきます。)こういったものはニュースに掲載することができないため、私一人で楽しませてもらうのですが(団員の皆さまゴメンなさい。。)、小学生の子供たちの鉛筆で書いてくれた全部ひらがな!の感想や絵などは本当に微笑ましく、「そのトランペットのピストンは多すぎるでしょう」とか「バヨリン(←と書いてあるのです)の弦は4本だよ」とか「○○パートのオジさん(あっ、スミマセン。。)、そんなにカッコよかったっけ?」とかツッコミを入れたりしながら元気をもらっています。ちなみに、高校生になると、キラキラペン率9割!句読点の代わりに絵文字が書かれていることが多く、「へぇ~~コレって、こういう時に使うのねぇ・・・」と感心しながら、これまた勉強させてもらってます。

 もう時効?!だと思うので告白してしまうと、最近の若い人は(小学生までも!)、どんな時も、場面に関係なく「ヤバイ」と言うようなのです。美味しくても「ヤバイ」、感動しても「ヤバイ」・・私、あまり若くないので理解に苦しみますが・・そうとは知らなかった2年前、「私は学校で○○を吹いているのですが、『未完成』の○○のソロが超~~ヤバかった!!!」というアンケートに言葉を失いました。「えっ?!私は、あの素晴らしいソロにうっとりしたけど・・でも、、もし、そんなにヤバかった?のだとしたら、他人に言われるまでもなく、本人が一番そう感じているわけだし・・」その時は、どうしてもタイプすることができずに胸の中にしまい込んでしまったのですが、それは私の大きな勘違いで「超~~素晴らしかった!!!」という意味だったのですね。あぁ~まだまだ修行が足りないかも。今更ですが○○さんには、こっそりお詫びしなくては。

 今までに対面したアンケート数、約4000枚!
タイプしようか困ってしまうようなイジワル?な内容に心が痛むこともあるにはあるのですが・・・。

 使われている文字の多くがデジタルに置き換えられて、表情をなくしてしまった今、文章として書かれている内容とともに、筆圧・文字の大きさ・乱れ具合などによって書いている人の感情を察することのできる手書き文字を、たくさん(過ぎる?)見ることのできる喜びも感じています。

 ところで、もし「超感情移入型」のマーラーさんが会場にいらしてアンケートを書いて下さったとしたら・・・きっと私の手には負えないなぁ。。

 今回も皆さまからのナマの声!心をこめてタイプさせていただきます。

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