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第238回演奏会のご案内

山下一史、9回目の登場
新交響楽団が初めて山下一史氏を指揮に迎えてから10年が経ちました。積極的に日本の現代作品に取組み、2016年からは千葉交響楽団の音楽監督を意欲的に務めるなど、音楽が社会や地域といかに関わるか意識した活動をしているように感じます。一言でいうと情熱の指揮者。この10年間に新響とほぼ毎年共演していますが、山下氏が新響にいつも求めるのは「プラスサムシングのある演奏をしよう」。単に楽譜の音を並べるのではなく、聴く人の心に届く演奏をしなければならないと私たちは気づかされます。
今回のプログラムには、そんな山下氏にぴったりなロマンティックな管弦楽作品2つと、デンマークの作曲家ニールセンの交響曲第4番を選びました。


山下一史とニールセン
山下氏のプロとしてのキャリアは、1986年ニコライ・マルコ国際指揮者コンクールでの優勝から始まりました。ニコライ・マルコはデンマーク放送交響楽団の創設に功績のあった指揮者で、優勝者は北欧各地でのコンサートを指揮します。山下氏はその中でヘルシンボリ交響楽団を振ったのがきっかけで、同楽団とニールセンの交響曲6曲全てを演奏しました。ヘルシンボリはスウェーデンですがデンマークにとても近い都市です。北欧でニールセンの交響曲を指揮した日本人はそうはいないでしょう。
ニールセンはデンマークの国民的英雄ですが、フィンランドのシベリウスと同じ1865年の生まれです。同じ北欧に生まれ国を代表する大作曲家となった二人ですが、ともに交響曲作曲家として認められ、ほぼ同じ数の交響曲を残し最後の交響曲も同じ年に作曲されています。また、若い頃はヴァイオリニストであり優れたヴァイオリン協奏曲を書いている点も共通です。
 シベリウスが森や厳しい自然を思わせる作風なのに対し、ニールセンの音楽は表情豊かで革新的。デンマークの平原や国民性がそうさせているのかもしれません。


交響曲第4番「不滅」
今回演奏する交響曲第4番は、ニールセンの作品の中で最も有名です。日本では「不滅」という副題で親しまれていますが、デンマーク語のDet Uudslukkeligeのニュアンスは少々違うようで「滅ぼし得ざるもの」「消し難きもの」といった表記も増えています。作曲されたのは1914~16年、第一次世界大戦が始まった頃です。北欧の盟主であったデンマークは、幾度かの戦争を経て誇り高い小国主義の国でしたが、中立を貫くことができず生活物資の欠乏やインフレといった困難な時代を迎えていました。そのような逆境においても人間の魂は滅ぼすことはできないのだという意志が暗示されています。
豊かな躍動感の中に民族的で田園風景を思わせる美しい部分もあり、最後は堂々と締め括られます。きっとデンマーク人に大きな勇気と希望を与えたのでしょう。2組のティンパニが大活躍をするので視覚的にも楽しめる、ライブで聴いていただきたい曲です。

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